3.11後を生きる君たちへ〜東浩紀 梅原猛に会いにいく

http://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20120325-31-24866

非常に残念な内容だった。

キリスト教文化圏、一神教の思考は行き詰まりを見せているので、日本のような多神教的な考え方がこれから求められる----以前、このようなことを小沢一郎が発言していたのを覚えていて、何て短絡的な考え方なんだろうと思っていた。だがしかし!全く同じような思考を梅原猛はもっていたのだ。政府の重要な会議の顧問を務めるような人物がである。

人間中心主義の西洋哲学は、自然や環境を支配の対象としてとらえ、それを破壊することを常として、揚句の果てに原子力災害を引き起こした。だから、西洋哲学は生き詰まりを見せており、それに代わるものとして、人間と自然を調和することを根本に据えている日本古来の思想に立ち返るべきである。以上が小沢―梅原の論点である。

これは、20世紀以前の西洋の思想に基づいた観方で、それ以降の構造主義ポストモダン分析哲学、科学哲学、プラグマティズム周辺の考え方をほとんど無視した恐るべき結論である。現代の西洋思想は 、人間中心主義、ヨーロッパ中心主義あるいは近代的思惟と呼ばれるものに対して、いかにそれを乗り越えるか、という歴史である。それをほとんど無視して日本の思想の優位性を説くのであれば、西洋から見れば逆の意味で日本中心主義、自民族中心主義のドグマに陥っていると簡単に指摘されよう。それは西洋の反対のバージョンである人間中心主義ではなかろうか?
小沢―梅原の論点は、責任転嫁とご都合主義と自己弁護である。100年前の西洋がそうであったように。

東がポストモダンの多元的な考えを引合に出して現代日本の状況を説明した時、梅原が質問に答えず自説のみ展開していたが、このことが現代の状況に対する疎さを物語っていた。東は年長者に対する畏敬は表していたが、恐らくこの爺さんは50年前に頭止まってしまったんじゃないか、って思っていただろう。それに引き替え、番組内の発言聞いても東の頭はキレキレだった。

確かに欧米の保守的な考え方する人の中には人間中心主義から逃れていない人が多くいるだろう。でも学問をかじったことのある人ならそんな考えは馬鹿げていると思うはずだ。だいたい、グローバルな世の中で東洋だの西洋だの言って正統性を主張すること自体ナンセンスだ。人類としての存在が我々の唯一の拠り所となるはずだ。他との違いより共通点を見出すべきだ。